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2010-07-09

4.レジリアンスについて

最近精神科関連の専門書には、この言葉が良く出てきます。日本語に言い換えると、「抵抗力」とか、「反発力」とか、あるいは「抗病力、病気になりにくさ」などと言われております。そもそもこの考え方が生まれてきた背景は何かといえば、悲惨な環境で育った子供達のその後の成長を見ていると、精神的な病が発症してしまう子供と、案外たくましく育って、精神的な病にならない子供がいることから、悲惨な環境で育った子供でも、全てが何らかの病になってしまう訳ではないということ、そして逞しく育った子供と、病になってしまった子供の違いは何処にあるのかを、探ってみる研究が盛んに行われている訳です。昨今言われていることの一つは、病気になってしまった事の、重要な要因の一つは、元々のその人の気質が関係しているらしいこと、そしてその気質は、ある程度その人の親から受け継がれていること、しかもそこに環境的な要因が深く関わって、発病してくること。一方、病気になりにくい人の場合、親から受け継がれている気質がもともと抵抗力があって、少しくらいのことでは平気であり、病気の発症にまで至らない事が多いということだそうです。これは昔からの普遍的な法則の一つで、要は遺伝と、環境の問題が潜んでいるというのです。これらを踏まえて、例えば、うつ病になりやすい人がいるのかという疑問が浮かびます。気質的に見ていると、ある傾向のある方は陥りやすいと言えそうです。また、一旦回復しても、再発しやすい方の中には、この気質が潜んでいる様に思います。ではどうやって罹りにくくするのかという方法ですが、これは根気強く、少しずつ気質の改善・変換を行っていくこと、そして、考え方を変える訓練を積み重ねていくことが勧められます。マスコミで言われている認知療法や、あるいは根気強い精神療法を行っていく方法です。もっと簡単にできる方法はないのかと思いますが、人の本質に係わる問題ですから簡単な方法はありません。本当に効果があるかと言う疑問には、根気よく治療を続けていると改善する方がいるとお答えします。治療者と、患者さんの一対一の関係の中で、話し合い、工夫しながら、少しずつ変わってもらうような働きかけをしていきます。幸い今話題になっている、平成22年4月以降の診療報酬改定には、この認知行動療法が保険診療の範囲に入っております。薬物と同程度の効果があるとされており、より確実な治療を行うためには両者とも必要な治療法と考えます。

2010年07月09日
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