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2010-07-26

7.青年期精神構造(10代~30代前半)の変化について

 著名な精神療法家の成田善弘先生の分析の一部をご紹介致します。過去20年位前から若者達は全く考え方や行動が変わってきた。1)女性患者の増加、とくに過食が目立つ、2)行動上の問題を持つ患者の増加、不安や葛藤を自己の内側に保持したまま悩む古典的な神経症タイプの患者が減って様々な行動上の問題(暴力、自傷、性的乱脈、薬物乱用、不登校など)を示す患者の増加、3)強迫的性格特徴を基礎にもつ病態の増加、うつ病や家庭内暴力などの患者には昔の強迫性格と比べて強迫性格は脆弱でありしばしば自己愛が露呈し一層の病態化や退行に陥りやすい、4)恥ずかしいと訴える患者が減り恐いと訴える患者が増加した、恥とは現実の自分があるべき自分に及ばぬ事が自他共に明らかな時に感じられるもので、近年の青年期患者は幼児的万能感的な自己愛を持ち続けており自我理想の形成に失敗しているから恥ずかしいとは言わない。幼児的自己愛はそれが傷つけられると「恥」ではなく「怒り」を生じる。過去10年くらいの間には、恐いという訴えより「ムカツク」「キレル」という訴えの患者が増えた。彼らは心の中に納めきれない感情を「ムカツク」という形ではき出し、さらに「キレル」と怒りが生に露呈してコントロール不能となり行動上の問題を生じる。歯止めとしての強迫的防衛が弱体化している。一方で全面的に「ひきこもる」若者達も増えている。最近の若者達は怖がって「ひきこもる」か、「キレ」て暴発するかに両極化しているようにみえる。この両極化は一人の患者の内部にも存在している。さらに心の表層と深層の区別が失われ、深層にあるべきものが表層に出てきてしまった。たとえば親や教師への殺害願望を容易に口にする少年、また強い禁止が働かず実行してしまうこと、さらに容易に別人格となり、別人格を出現させることで人格の統合への努力を放棄し、それにより内的葛藤から免れている。さらに他罰的な姿勢の患者が増えた。
 
-成田善弘「伝統的精神療法は近年の青年期の変化に対応できるか?」臨床精神病理誌より引用ー

2010年07月26日
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