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2010-09-11

13、自殺研究の結果について

  自殺の原因分析を行った資料が手元にあります。全国の政令指定都市を中心に、一定期間に起こった自殺者の遺族を訪問して、その特徴を調べたという調査です。この調査によると、全体として、自殺は男性が女性よりも多く、年齢では人口動態統計と比較して、20代と30代の割合が高く、60代の割合が低いという結果だそうです。地域別にみると、東北北陸、近畿の割合が高く、九州の割合が低いそうです。自殺の手段としては、縊死(首つり)の割合が最も高く、飛び降りや薬物によるものも高いそうです。死亡時の職業では、被雇用者・勤め人の割合が高く、主婦・無職者は低いそうです。ここで、自殺予防のための介入のポイントとして、主たる自殺方法の三群、縊死、飛び降り、ガスのうち、年齢別に比較してみると、縊死はすべての年齢階級にわたって認められたのに対して、飛び降りは若年群(39歳以下)で90.9%、ガスは中年群(40~59歳)に75.0%と、特定の年齢階級に優位に関連したそうです。また、臨床診断で、特徴的な精神障害は無かったものの、飛び降りが若年群に多いことから、学校教育年齢における衝動性制御能力の獲得が自殺予防につながる可能性があるとのこと。死亡時の職業の有無について、分類したところ、有職者には、既婚の男性を中心に、死亡1年前のアルコール関連問題や、死亡時点の返済困難な借金という社会的問題を抱えていた事例が多かったそうです。一方、無職者では、有職者と比べて、女性の比率が高く、青少年の未婚者が多い。この場合、有職者に認められたような、社会的問題は確認されていない。精神科受診群と非受診群の比較では、死亡前1年間に精神科もしくは心療内科の受診があった者は50%で、受診していた者と非受診群は全く半々であった。受診群ではやや女性が多く、39歳以下のものが65.8%を占めており、非受診群と比べて有意に若年であった。さらに受診群では57.8%の者が治療目的で処方された向精神薬を過量摂取しており、55.6%の者が死亡前に自傷・自殺未遂を経験していた。診断的に多かったのは、受診群では、気分障害(63.5%)、統合失調症(18.9%)の割合が、非受診群と比べて高く、非受診群では適応障害(16.2%)が高いという点で、有意差があった。なお、受診群では、89.5%の人が、死亡前1ヶ月以内の受診があった。
 さて、自殺のサインとしては、「死について口に出すこと」「過去1ヶ月の身辺整理」「不注意や無謀な行動」「身だしなみを気にしなくなる」ことが自殺のリスクと強い関係にあったそうです。このようなサインをみたら、危険性が高まっていると考えるべきです。
-加我牧子ほか、心理学的剖検データベースを活用した自殺の原因分析に関する研究-から引用

2010年09月11日
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