toggle
2010-09-26

14.抗うつ薬は本当に効くのか?プラセボ効果について

最近読んだ本の題名です。著者のアービング・カーシュは、イギリスのハル大学、心理学の教授です。彼はUSAのコネチカット大学に留学していたころから、長年にわたり、プラセボ効果(偽薬)の研究をしていたそうです。その時に研究したことから導かれた結論は、信頼から生まれる力は「うつ」を軽減するということだそうです。そして、信頼がどのような治療においても、心理学的にも薬理学的にも重要であることも理解したそうです。彼は当初、抗うつ薬はプラセボ以上に実質的な効果があると信じていたそうです。それは研究者として、それまでのデータがうつ病に対して有効であると、公表された文献に記載されていることをそのまま信用していたためです。なぜ「抗うつ薬が本当に効果があるのか?」という疑問を持つことになったのかといえば、うつ状態の人に、生活の中で何に対して、一番気がふさぐのか話を聞いてみると、「自身のうつだ」という答えが圧倒的に多いということ。ここで「うつ」とはふさぎ込んでいく状態を意味します。重度のうつに陥った人は、耐えられない悲しみや不安を感じ、時にはその重荷から解放される手段として、自殺を考えてしまう程ひどいものです。もっとも困るのは、こうした状態から立ち直ることに絶望感を抱いてしまうことです。つまり、うつとは落ち込んでいくことです。長年うつを研究してきた専門家によると、この現象を「うつに対するうつ」と呼んでおり、うつに対する有効な治療は、部分的ではあっても、自身のうつに対して落ち込んでいくことからくる絶望感を変えてあげることといわれております。うつの中心的特徴が絶望感ならば、プラセボ効果の核にあるのは希望です。プラセボは悩みから救われるという希望を患者に植え付けるものです。そして救われるという希望は、うつの根源的な特徴に対抗できる。 うつについては従来、脳内化学物質の不均衡によって起こるという考え方が一般的であります。抗うつ薬が治療に有効であるという思い込みは、この考え方が根底にあります。しかし、公開されているデータや非公開のデータを入手して、客観的に分析を加えると、抗うつ薬治療の効果は、すべてとは言わないまでも大部分が、本当はプラセボ効果であることを示しているのです。もっと言えば、抗うつ薬の化学的な効果は小さいか、あるいは皆無かもしれないが、投与されればプラセボ効果を生み、大幅にうつを改善していく可能性は持っている。要はこのプラセボ効果なのです。その薬が本来持っている効果は実はごくわずかなもので、本当は全くないのかもしれないが、その薬を飲んで、効くと思った患者さんの気持ちが大切であり、それは、その薬を処方する医師に対する信頼感が不可欠である(これをプラセボに対してレセボ効果という)。しかもこれが大きく効果を左右するのです。
 英国国立医療技術評価機構(NICE)では、うつ病患者に有意義な治療を施すのに抗うつ薬の投与ではうまくいかないことを認識して、代替えとなる治療法を提供すべく、計画を策定中である。また、神経科学者は化学物質不均衡説ではうつの説明はできないことに気付いております。
 ―「抗うつ薬は本当に効くのか?」―アービング・カーシュ著より引用、参考とした

2010年09月26日
タグ:
関連記事