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2011-01-08

18.SSRIにより生じるapathy(無感情症)について

 セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の有害事象として、消化器症状、中断症候群、衝動性亢進、性機能障害などは有名である。さらにあまり知られていない有害事象に、apathy(無感情症)がある。Marinらの無感情症の定義では、apathyは以下の4点で定義される。1)意識障害、認知障害、情動障害に拠らない一次的な動機の欠如、2)気分・情動・興味・関心の欠如、3)目標指向性の行動における、行動、認知、情動の同時低下、4)動機の欠如を説明するに足る情動的苦痛はないか、あるいは不十分であること。Marinによればapathyは主観的には「動機の欠如」客観的には「行動の低下」であり、一見すると抑うつ症状の意欲低下と区別しにくい。しかし両者の違いは、内面的には、抑うつ症状が「苦痛・苦悩がある」「考えあぐねる」状態であるが、apathyは「苦痛・苦悩がない」「無関心」な状態である。すなわち両者は正反対の現象であり、本質的には明確に区別される。実際に多くの検証でも両者は明確に異なる症状であると結論している。このapathyの特徴である主観的苦悩感の欠如はapathyの判断をする上で留意すべきことである。また、患者本人の訴えだけではapathyを見いだせない可能性があるため、家族などの客観的観察との解離が最も重要な所見である。

ー精神医学2009年9月号、佐藤晋爾らの論文より引用ー 

2011年01月08日
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