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2011-10-04

33.精神疾患における遺伝因子と環境因子の問題について、

 おもな精神疾患について、DSM-Ⅳ診断基準を適用した診断により、遺伝因子と環境因子のどちらが、より大きく影響を与えているかを研究した報告を掲載する。対象とした疾病は、ーパニック障害、広場恐怖、特定の恐怖、社会不安障害、拒食症、身体化障害、アルコール依存、薬物依存、行為障害、うつ病、気分変調症、妄想性人格障害、シゾイドパーソナリティー障害、失調型パーソナリティー障害、反社会性人格障害、境界性人格障害、自己愛性人格障害、演技性人格障害、依存性人格障害、回避性人格障害、強迫性人格障害-であり、方法としては、12698組の双子に対する面接質問紙法をとった。その結果、1)遺伝的な要因のほうがより大きな影響を認めた疾患は、社会恐怖(0.57)、広場恐怖(0.6)、パニック障害(0.55)、薬物依存または濫用(0.59)、行為障害(0.57)の5疾患群であり、2)環境要因がより大きな影響を認めた疾患には、うつ病(0.57)、拒食症(0.58)、身体化障害(0.56)、気分変調症(0.72)、シゾイドパーソナリティー障害(0.66)、失調型パーソナリティー障害(0.62)、妄想性人格障害(0.71)、演技性人格障害(0.68)、自己愛型人格障害(0.65)、依存型人格障害(0.63)、強迫性人格障害(0.66)の11疾患が挙げられている。3)遺伝的とも環境因的ともつかぬ疾患としては、全般性不安障害、アルコール依存、反社会的人格障害、境界型人格障害などの4疾患が挙げられている。この結果を見ると、従来遺伝性が濃厚と言われていた、うつ病や気分変調症などはそれ程高いわけではないことが分かる。また、逆に、パニック障害や社会不安障害、薬物依存が意外にも、遺伝的な要因がより大きいことが窺える。そして、環境的要因が高いと考えられていた、アルコール依存、反社会的人格障害、境界型人格障害、などは、遺伝とも環境ともつかない、むしろ個人のナチュラルな問題で起こってきているという分析が出来る。この研究の限界としては、1)あくまで生粋のノルウエイ人の双子研究であること、2)多くの重要な精神疾患ー総合失調症、自閉症、双極性障害が含まれていないこと、3)伝統的な統計手法を使ったために、男性と女性のそれぞれの要因割合を見いだせなかったこと、が挙げられる。

-Kenneth S.Kendler,らによる「DSM-Ⅳ診断基準による疾病の、遺伝と環境による危険因子について」Am J Psychiatry、Jan.168.2011より引用-

2011年10月04日
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