toggle
2013-07-02

54.双極性うつ病に対するリーマス・ラモトリジンの効果について、

リーマス(リチウム)は50年以上にわたり双極性疾患の標準となる治療薬である。この薬に対する臨床的・研究的経験は大変に豊富で、うつ病に対する有用性は、かなり古い研究で実証されてきたが、現在の世代の精神科医からは概して低く評価されている。 エキスパート・コンセンサスガイドラインと米国精神医学会の双極性障害治療ガイドラインのいずれも、リチウムと気分安定作用を有する抗てんかん薬を、抗うつ薬治療を導入する前の双極性うつ病の第一選択薬とすることを提唱している。リチウムは双極性疾患に対する使用が導入されて以来、急性期の双極性うつ病に対して用いられてきた。双極性障害患者を対象とした比較対照研究では、急性期の双極性うつ病患者の大半で常に68~100%、平均68%が反応するという有意な改善が認められている。これは単極性疾患に対する抗うつ薬に期待される値と非常によく似ているが、抗うつ薬は単極性うつ病に対するリチウム有効率51%を上回っている。これら臨床的に有意な反応率はリチウムに関する一般的な臨床経験とは明らかな差異がある。この食い違いはリチウム治療の最初の対照試験では、リチウム濃度が臨床医ににより一般的に用いられている約0.7mMよりも、1.0mM程度と全般的にはるかに高かった事で説明できる。リチウム単剤治療の研究や、リチウムと抗うつ薬の併用投与の研究からは、リチウムの投与量が多く血中濃度が高いほうが、投与量の低い場合よりも、うつ症状の治療と予防に関してより効果的であることを裏付ける十分な証拠が得られているが、リチウムの副作用の負担軽減を図るために、臨床医は双極性うつ病に対して至適用量以下でリチウムを用いている現状がある。
 ただし、双極性患者のうつ病相予防に対するリチウムの効果は明らかではない。
一方、ラモトリジンについては、2つの大規模なプラセボ対照長期維持試験(18ヶ月)で研究されている。もっとも最近のエピソードが躁病だった患者と、もっとも最近のエピソードがうつ病だった患者に対する有用性を検証する目的でデザインされたもので、両者の研究とも、ラモトリジンは躁病または軽躁病には効果が無く、将来のうつ病の再発を予防、あるいは遅らせる効果が認められた。リチウムかラモトリジンかプラセボを、ランダムに割り振られた638人の患者の結果を解析すると、うつ病に対する介入を遅らせる上で、リチウムとラモトリジンがプラセボよりも優れていること、さらにラモトリジンは数値的にはリチウムを上回っているが明らかになった。これらの研究結果から、FDAは双極性障害の維持治療にラモトリジンを認可した。

-「双極うつ病」Rif S.El-Mallakh.M.D.,S.Nassir Ghaemi.M.D.著(訳)田島治、佐藤美奈子、星和書店2013.2より引用-

2013年07月02日
関連記事