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2014-04-30

64.パニック障害に対する薬物療法終了の基準と方法について

パニック障害(PD)とは、突然の動悸、呼吸困難感、発汗等のパニック発作(Panic Attack:PA)を繰り返し、その結果予期不安や回避行動が目立ち、社会生活上、大変な不便を来す不安障害の一つである。女性に多く、比較的よく見られる疾患である。治療ガイドラインでは抗うつ薬の単剤投与、必要に応じてベンゾジアゼピン(BDZ)系抗不安薬の併用が推奨されている。しかし、PDは急性期治療により症状は軽減するものの、決して容易に寬解に至るわけではなく、エピソードの平均期間は6~8年とも言われている慢性疾患である。PDが長期治療を必要とする慢性疾患であることを踏まえた上で、PD薬物療法のリスクとベネフィットにつき考えてみる。
1,PDの長期経過:PDは再発しやすい慢性疾患である
PDに薬物療法が有効であることはよく知られているが、より長期間にに渡り実臨床に則した研究結果では、寛解率は約20~80%、寬解後の再発率は20~65%とされている。つまりPDは寬解しにくく再発しやすい慢性疾患であることが分かる。よって、PDに対する薬物療法は年単位で必要になる。この傾向は広場恐怖を伴うPDでより顕著である。また、PDの長期経過について、「治療が成功したからといって症状が完全に消失することは少ない」という事実がある。それはパニック発作が消失した後も、残存症状が残る事が多い。たとえば残存症状として、身体的・恐怖症状的不安、低い自己評価、広場恐怖、心気症、精神的安寧の乏しさなどである。また、予期不安(Anticipatory Anxiety:AA)や恐怖症状的不安、あるいは回避行動(Aviodant Behavior:AB)が残存することも多く、30~80%の患者はPAやAA、AB等の症状が治療開始後6年以上も続くという報告がある。
この場合の寬解の条件としては、症状の持続が短く、軽症で、併発症状がない場合とされる。
2.PDに対する薬物療法終了の基準:推奨される治療継続期間は2年以上、しかしまだ十分なコンセンサスはない。
厚生労働省の治療ガイドラインでは、推奨される維持治療期間は6ヶ月~1年、その後さらに6ヶ月~1年かけて終了、としているが、海外の研究や実臨床によれば、これは明らかに短いようである。
3.PDに対する薬物療法終了の基準:治療継続期間だけでなく、状態も考慮する。
PDの薬物療法についての明確なエビデンスに基づく継続期間は現在の所無い。薬物治療期間をどれだけ長くするかではなく、薬物終了を考える時点での症状がどれだけ消失しているかという点に注目すべきである。治療終了を考えるときに、もし残存症状を認めるときには、安易に治療終了せずに、さらなる症状の軽減、そして完全寬解を目指して薬物療法を継続するか、CBT(認知共同療法)に変更または追加するべきである。さらには、患者自身が薬物療法終了を希望・納得し、それに自信を持っているかどうかも重要である。

-桑原秀樹ら「パニック障害に対する薬物療法終了の基準とその方法」
臨床精神薬理Vol.17 No.4 2014より抜粋引用した-

2014年04月30日
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