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2014-09-06

68.健康食品は安全か?

健康食品は、健康な人のための食品である。わざわざ健康食品を買ってまで摂る人は、何らかの効果を期待しているのだろうが、ほとんどの健康食品は効果が証明されていない。それでも健康な人が摂る分には、それほどの害にはならないであろう。しかし、少なくとも病気の人にお勧めはできない。なぜなら、健康食品にはリスクがあるからだ。食品だからといって安全とは限らない。健康食品による、さまざまな健康被害が報告されている。たとえば、下痢、嘔吐、発疹、間質性肺炎、腎障害、肝障害、排尿困難、血小板減少症、光線過敏症などがある。
中でも多いのが、肝機能障害である。倦怠感、黄疸、食欲不振、皮膚のかゆみなどの自覚症状や、たまたま受けた採血検査などで発見される。肝機能障害の患者さんを医師が診察するときは、ウィルス性肝機能障害、自己免疫性肝炎、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害、鉄や銅などの代謝異常のほかに、健康食品やサプリメントによる肝機能障害を念頭に置く。
肝臓は回復力の高い臓器であり、健康な人が肝障害を起こしても、原因となった健康食品を中止して安静にしていれば、ほとんどは自然に回復する。しかし、もともと肝機能が低下している人が肝障害を起こすと致命的になりうる。
 60歳代の肝硬変の女性が、毎日スプーン1杯のウコン粉末を飲み始めたところ、2週間後に症状が悪化し、約3ヶ月後に多臓器不全で死亡したという事例がある。食品であっても、大量かつ長期的に摂取すると思わぬ副作用が生じうる。ウコンは肝機能を高めるといわれており、肝障害の患者さんが摂取することがあるので要注意だ。 がんの患者さんが、薬効を期待して健康食品を摂取することもある。キノコの一種であるアガリクスも、そうした健康食品の一つ。胃がん手術後の50歳代の男性が、外来で観察中に肝障害を指摘された事例では、受診の3週間前からアガリクスを服用していたことが判明し、服用を中止したところ肝障害は改善した。これだけなら、一過性の肝障害とアガリクスの服用時期とが偶然一致していただけかもしれない。この症例の場合、翌月の外来で再び肝障害が確認された。肝障害が改善して安心したのか、この患者さんは 再びアガリクスを服用していた。アガリクスの服用後に肝障害が生じ、中止後に改善し、服用再開後にまた肝障害が悪化したわけで、意図しない偶然の再投与によってアガリクス服用と肝障害の因果関係が強く疑われた一例である。これらの事例からは、「天然成分だから安全だ」あるいは「食品であるから安全だ」とはいえないことが分かる。それでは、医師が処方している薬はどうか?という意見があるだろう。その通り。医療機関で処方されている薬にも、薬剤性肝障害をはじめとして様々なリスクはある。しかしながら、薬と健康食品には、2点ほどの決定的な違いがある。1点目は薬はメリットがある薬効が証明されていること、健康食品は薬効が証明されてないこと。2点目は、薬についてはデメリットである副作用の情報が広く公開されているが、健康食品はそれがないことである。つまり、医薬品はメリットもデメリットもはっきりしているので、医師が両者を比較できるが、健康食品は情報がないため、比較できないし、それが必要かどうかを判断するのは医師ではなく、個人であるということだ。
-内科医NATROM著「ニセ医学」に騙されないために(メタモル出版)より引用~

2014年09月06日
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