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2015-07-04

78.精神科の「名医」とどう巡り会うか?について、

ここに紹介する話は、医師の立場から、患者が「名医」と間違えやすい幾つかのパターンを挙げる。
まず初めに、1.初診でズバリ病名がつく:精神科の診断基準は一様ではなく、曖昧な部分も多い。初診でうつと診断した患者が躁転して、躁うつ病だったことが後から判明するケースもある。初診で病名がつかないことはよくあるので、心配は無用である。パーソナリティー障害などでは本人に病名を告知すると、治療がうまく進まないこともあり、敢えて伝えないこともある。2.副作用の多い薬は出さない:ショック・アナフィラキシー様症状・消化管出血・ぜんそく発作・・・以下20もの副作用が添付文章に書かれた薬がある。実はこれ、抗うつ薬ではなく、おなじみの消炎鎮痛剤「ロキソニン」の副作用である。ネットで処方薬の名前を検索すると、おどろおどろしい副作用の記述に出くわすことがある。それを読んで不安になり、医師に相談せずに服薬をやめてしまい、症状の悪化する患者が増えている。ネットの情報を鵜呑みにせず、不安を感じたらまずは医師に相談すること。3.薬の量を増やさない:精神科では少ない量から始めて、徐々に増やしていくのが普通である。初診で処方された薬の量がずっと同じということはない。様子を見ながらゆっくり増量し、症状が安定したところで維持する。量が増えるのは当然、安心していただきたい。ただし、初診で6種類以上の薬が出たときには要注意。その理由を問うてみる必要がある。4.投薬を急にやめてくれた:ポイントは「使う薬の種類が多くても、症状にあわせてこまめに薬を変えること」。これは大切。むしろ患者の希望を入れて、投薬を急に全面的にやめてしまったり、中身をガラリと変えてしまう医師は要注意。副作用に苦しみ、薬物を断とうとする患者はいる。しかし、薬の量や中身は徐々に変えていくことが治療の鉄則。薬に頼らずカウンセリングで治したいという患者もいる。しかし、主体は薬物療法であり、カウンセリングはあくまで補助療法。統合失調症やPTSD等、カウンセリングが副作用を引き起こす病気もあることを知っておくこと。5.毎週のように診てくれる:外来診療は大抵2~4週間に1回。状態が落ち着いているのに毎週診療に呼ばれる様な場合、親切ではなく単なる儲け主義かもしれない。頻回の血液検査や心理検査、保険のきかない高額なカウンセリングを半ば強制的に行おうとする医師にも注意。6.やさしくて倫太郎みたい:「先生がいないと生きていけない」などと患者が主治医に依存してしまうのは、治療としては失敗である。患者との適当な距離を守るのは医師の責任。淡々としている、と感じるくらいが理想。ドラマのDr倫太郎のように、「診療室のドアはいつでも開いています。ずっとあなたのそばにいますから」なんて囁く医師がいたらご用心。7.症状以外の患者の環境にも目を向けてくれる医師が本当の名医。「睡眠や飲酒などの生活習慣の指導をはじめ、今は家族と距離を置いた方がよいとか、仕事のペースを落としましょうとか、患者が抱えている問題全体を見られるのがいい精神科医。自立支援医療制度や、デイケアなどに関する提案をしてくれるのも、重要です」8.症状が改善しない場合、別の医師を捜すかどうか判断する目安は半年くらい。

  - 精神科医Tomy氏インタビュー、アエラ2015.7.6号より抜粋引用-

2015年07月04日
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