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2016-01-01

84.ジェネリック医薬品普及80%目標?について、

新年明けましておめでとうございます。さて、政府は2016年度からジェネリック医薬品(後発品)の価格を、今よりも安価にして、後発品使用を80%まで増加させるとしている。2013年度時点で40兆円を突破した医療費支出の削減の一環として、2020年度末までに1兆円以上の医療費の抑制を考えている。しかし、値段だけで後発品が普及するとは考えにくい。厚労省は「有効性や安全性に基本的な違いはない」と説明するが完全に同じではない。特許が切れても、製法や添加物など非公開の情報があるため、全く同じ薬を製造することは不可能なのだ。また、薬剤師によれば、「流通が悪く、注文しても欠品で入手しにくい後発品もある。これは患者も薬局も迷惑する」という。
実は政府は、薬局に後発薬を使わせる方法として「後発医薬品調剤体制加算」という餌を撒いている。薬局は後発品使用率55%以上であれば、一処方に付き180円、65%以上であれば220円をすべての処方箋に加算できる。しかし、本来後発品を推奨して医療費を減らす目的なのに、薬局への報酬で医療費を増やすのは本末転倒。また、患者にしてみれば、先発品のみの処方でも勝手に加算されている。一方医師の不信感も強い。厚労省の2015年調査では、勤務医の54.9%、病院管理者は勤務医より多く66.9%が後発品に不信感があると答えた。きっかけは「先発品との効果・副作用の違いを経験68.4%、あるいは後発薬品の品切れ・製造中止67.4%」。後発薬は突然、供給停止になるリスクがある。海外メーカーが日本の基準を満たしていないと、後で判明する例が少なくない。複数の後発品メーカーが同じ原薬メーカーから調達していると最悪な事態になる。薬剤師や医師の、後発品に対する不信感は強い。医療フリーライター早川幸子氏によると「低所得者でも利用できる後発品の普及は悪くないが、子どもや難病の医療費なども公費負担なのに、厚労省は後発品を使うように通達し、狙い撃ちされている。公務員の後発品使用率は会社員や自営業に比べて非常に低い。どうしてもというなら、公務員から始めるべきだろう」と述べている。
ここで、日本の医療費高騰の根本的な原因は何か?ということだが、高齢化や薬剤費ではなく、医療の高度化・医療技術の進歩がその主因なのだ。後発品切り替えでは、医療費の抑制には大した効果は期待できない。この点をしっかり認識して、本当に医療費を抑制するのであれば、高度医療を受ける場合の費用負担を、もう一度議論する必要がある。

-東京新聞「こちら報道部」2015.12.12記事より抜粋引用・加筆-

2016年01月01日
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