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2017-04-29

100.日本の医療、比べてみたら10勝5敗3分けで世界一、その1

不幸なことに、日本人ほど自国の医療に不信感を持っている国民はいない。2010年にロイター通信が報じた「医療制度に関する満足度調査」では、日本人の医療満足度は15%で、これは世界の先進・新興22カ国の中で最下位である。トップはスウェーデンの75%。さて、この冠たる医療不信の原因は何か?一つは大病院等によく見られる長時間待ち、あげくの「3分診療」ではないかと思う。各種サービス業が外国人の感動を誘うくらい万端行き届いている分、「なぜ医療機関だけ、こんなに患者を平気で待たせるのか」と皆さんが不満を募らせることになるのでしょう。一方普段世話になっている地域の開業医に対しても、日本人は必ずしも良いイメージを抱いているとは限らない。立派な邸宅を構えて、ベンツを乗り回して~といった庶民の暮らしとは異なる羽振りの良さ。それがある種の反発を誘っているのは否めない。実際はそんな派手な暮らしをしている開業医ばかりではない訳だが。もう一つ根強いのは薬に対する不信感である。本当にこの薬が必要なのか?自分は薬漬けにされていないだろうか?薬の副作用は大丈夫なのか?等など。医療不信の原因はまだあると思うが、ここではむしろ逆に、日本の医療について、客観的データにより、諸外国と比較すると、優れていることが分かる事実を示したい。
一例を挙げると、肺がんの術後5年生存率は、日本がまぎれもなく世界1位である。また、大腸がん・胃がん・肝臓がんも世界トップクラスの水準である。
優れているのは、がん治療だけではない。国民皆保険制度の充実や、医師・看護師ら医療従事者の水準も他国に比べると高いといえる。もちろんすべてに渡り日本が抜きん出ている訳ではない。分野によっては欧米に大きく水をあけられているものもあるし、他国を見習うべきこともある。しかしトータルに見て、日本の医療は世界トップの水準であるといえる。その理由は3つに分類できる。

1、高額の医療費を覚悟すれば高度な医療を受けることができる「髙自己負担・髙医療型」-アメリカなど。
2,あまり高度な医療は期待できないが、窓口費用はほとんどかからない「低自己負担・低医療」-イギリス・北欧など。
3、ほどほどの費用で一定レベルの医療が受けられる「中自己負担・中医療」-日本・ドイツ・フランスなど。
ここで比較する項目は、”医療レベル・医療の身近さ・薬への依存度・医療費・病院・高齢化対策”の6項目である。OECD(経済協力開発機構)等の公的機関の調査データを使って比較対象をした。対象国は、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの5カ国である。結論から言うと、日本の医療は10勝5敗3分けであった。日本の医療が「世界1」の水準であり、これを国民は皆知らないということだ。
まず初めに、医療のレベルの比較である。世界67カ国2500万人以上のがん患者の術後5年生存率調査(2004~2009)によると、肺がんでは、日本は30.1%、アメリカ18.7%、ドイツ16.2%、スウェーデン15.6%、フランス13.6%、イギリス9.6%、最も低いイギリスと比較すると3倍の開きがある。また、肝臓がんでは、日本27.0%、アメリカ15.2%、欧州も20%に達していない。大腸がんでは、日本68.0%、アメリカ64.5%、スウェーデン60.7%、ドイツ60.4%、フランス:データなし、イギリス53.3%である。
なお、最新の乳がんの5年生存率は、日本はアメリカに次いで2位87.3%、子宮頸がんも3位70.2%と大健闘している。また、数あるガン手術の中でも極めて難度の高い膵頭十二指腸切除術という膵臓がんの手術があるが、日本ではこの手術の成績が良く、手術後30日以内の死亡率は1.35%、アメリカでは2.5%となっており、アメリカより2倍近くの安全率があることが分かる。アメリカでは血管をつなぐ作業が中心の心臓手術など、型の決まっている手術などは上手であるが、ガン手術のような患者ごとに臨機応変に対応する必要のある手術は苦手とする傾向があるようだ。

-真野俊樹「日本の医療、比べてみたら10勝5敗3分けで世界一」より引用-

2017年04月29日
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