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2018-11-29

119.「没イチ」パートナーを亡くしてからの生き方について、

著者・小谷みどりさんの実体験です。(7年前のある朝、ふと目覚めたら外が明るくなっていた。その日夫は成田からシンガポールに海外出張に行く予定。7時には家を出て行くはずだが、起きている気配がない。飛び起きて夫の寝室に向かって「早く起きて。おくれる~」と叫びながら部屋に入った。しかし、夫はすやすや眠ったまま。「早く~」ともう一度叫んで夫に近づくと、何か様子がおかしい。夫の腕がふとんからダラリと出ているのに気づく。腕の内側に内出血のような痣(あざ)あり。「あ、死斑だ」「死んでる」と咄嗟に考えた。なぜ死んでいるのか?頭が混乱している。すぐ思ったのは「私が殺した?」「いや、ありえない、私は先に寝たから」今思えば脳がちゃんと働いていなかった。どのくらいベットのそばにいたのか分からないが、「とにかく警察に知らせなければ」と我に返った。と同時に、親族に連絡した。その後警察、消防にも連絡。しかし夫の会社関係者への連絡、あるいは夫の友人への連絡、これが全く分からない。会社の誰に連絡すべきか、あるいはどの友人に連絡すべきか、夫婦なのに、夫の交友関係をほとんど知らなかったことに、愕然とした。そして慌ただしくお通夜・お葬式を執り行った物の、夫は、まさに金曜日は普通に出勤して、月曜日は遺骨になっている状態であった)。その後、夫の会社に対する過労死訴訟のことや、ふとしたときに襲ってくる悲しみ、友人からの弔いの言葉に対する違和感などを丁寧に繊細に書いた本である。また、仕事復帰のための気遣いの疲れのことなど、簡単には経験できぬ話が綴られている。さて、大切な人と死別した時の心の反応として、1ショック、2虚脱、3閉じこもり、4適応、という段階を経ると言われているが、個人差があり、その通りには行かないことが多いし、著者も夫の死を受容する所まではまだ行けてないことが述べられている。アルフォンス・デーケン名誉教授(上智大学)は愛する人を亡くした時の「悲嘆のプロセス」を12段階に分けている。

1.精神的打撃と麻痺状態:衝撃により一時的に現実感覚が麻痺状態に陥る、

2.否認:「あの人が死んだなんて本当のはずがない」など、死を認めようとしない、

3.パニック:身近な死に直面した恐怖から極度のパニックに陥る、

4.怒りと不当感:運命や神に対する怒り、不当な苦しみを負わされたという激しい怒りや感情、

5.敵意と恨み:周囲の人々や故人に対して敵意という形でやり場のない感情をぶつける、

6.罪意識:「ああすれば死なずにすんだかもしれない」などと悔恨の念から自分を責める、

7.空想形成・幻想:故人がまだ生きているかのように思い込み、帰宅を待つ等の振る舞いをする、

8.孤独感と抑うつ:健全な悲嘆のプロセスの一部、本人の乗り越える努力と周囲の支援が大切、

9.精神的混乱と無関心:日々の生活目標を失った空虚さから、どうしていいか分からなくなり、あらゆることに無関心になる、

10.あきらめ、受容:相手の死を受け入れ勇気を持って再び現実の世界に立ち返ろうとする、

11.新しい希望:ユーモアと笑いの再発見:悲嘆を乗り切りつつあるしるし、

12.立ち直りの段階:新しいアイデンティティーの誕生:苦痛に満ちた悲嘆のプロセスを経て、より成熟した人格者として生まれ変わる、

といった段階がある。多くの場合、何らかの病気で亡くなる人が多いので、突然死に比べれば、遺族はある程度覚悟ができるが、覚悟ができていてもこのプロセスのような経過をたどることが多い。実際夫と死別した著者は、「残された人は人の死を受容すべき、という意見には反対で、私のように、どこか遠くへ出張していると思っていて、何か問題があるでしょうか。いつか受容するだろうし、受容できなくてもいいのではないかと考えている。身を切られるほど悲しくても辛くても、同じ思いを配偶者に味わわせなくてよかった、と思うしかない」というのが著者の経験から学んだ納得の方法であると述べている。
小谷みどり著「没イチ」パートナーを亡くしてからの生き方-より抜粋引用

2018年11月29日
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