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2019-06-01

125.「6月病」について,

メンタルヘルス不調に陥るリスクは、今年6月が高い。例年にない10連休で、5月病が続出。余裕のない職場に、その影響がドミノ倒しのように押し寄せる。Aさんが勤める会社では、連休明けから一週間がたった頃、同僚の一人が出社しなくなった。翌日も、その翌日も出社せず、電話も繋がらない。休暇中は海外旅行に行くと聞いていたので、旅先で事故に遭ったのかと皆心配した。結局、会社が嫌になり、「飛んだ(無断で退職)」だけだと分かったが、業務は同僚たちが引き継がねばならない。彼が担当していたのは、多数のバイヤーや報道陣を集める発表会で、要求レベルが高いクライアントである。準備がどこまで進んでいたのか、誰も把握していなかった。「業務の進捗状況を確認し直すところから始める必要があった。急遽引き継いだメンバーは、寝る間もなく仕事をすることになった」。社員が「飛んで」から1ヶ月たった今も、業務量は高止まり。4月から新生活が始まり、張り切ってスタートダッシュしたものの、連休明けにはやる気がなくなる「5月病」はこれまでも多く聞かれた。だが、今はそれだけにとどまらない。1人の5月病の穴埋めに、周囲の人までオーバーワークに陥り、メンタル不調になってしまう。5月病に影響受けた「6月病」が広がっている。企業カウンセリングのプロB曰く、「長期の連休明けは不調を訴え出社できなくなる人が多い時期である。休みと仕事の切り替えができない人はもちろん、休み中に冷静に考えて、自分の働き方はおかしいと感じる人もいる。逆に休めなかった人も、他の人と比べてやる気を失いやすい」連休明けに出社できなくなった人の影響が徐々に職場中に広がり、6月に顕在化しかねないのである。10連休明け、「退職代行サービス」にも、多くの問い合わせがあった。「弁護士による円満退職代行」サービスを提供するC法律事務所には、「連休明けに退職したい」という依頼が殺到した。「連休が明ける5月7日の朝に会社に連絡して欲しいという依頼が30件以上、相談だけなら、その3倍は来ていた」という。連休明けに退職代行を依頼すると聞くと、「長い休みで遊びほうけた新人が安直に逃げ出した」と感じるかもしれないが、実際は「10連休中にじっくりと考え、ようやく決心できた人が多かった。普段は忙しすぎて退職を考えることすらできなかった方が、少し時間ができて、やっと冷静に考えたのだと思う。新入社員から、ベテランまで幅広く依頼があった」というのが現実である。これらの職場に共通する要因の一つは、職場の余裕のなさである。「特に問題なのはその負担がいつまで続くのかを社員に明示しない企業が多い」ことである。業務が多忙となったとしても、それがいつまで続くのか分かる場合とそうでない場合ではかかる心理的なストレスは大きく違う。余裕のない職場環境は、不調のドミノ倒しを引き起こすだけではない。会話は全てメイルという職場が増え、同僚とゆっくり話す暇も無い状況の中、かつては5月に不調を訴えられたケースでも、なかなか言い出せず、慢性的にため込んだストレスが6月病として吹き出すケースもある。前出のカウンセラーB曰く、「最近はリモートワークも増えて、上司が近くにいる環境ではない企業が増えている。一人で完結する仕事も増えており、職場内のコミュニケーションが希薄になり、なかなか相談できないと感じる人もいる。すぐに対処していれば、重症化しなくて済んだと感じることも多い」。6月病について、D精神科医は「職場内で負の連鎖により表れる6月病は多くの場合、適応障害」である。適応障害よりも更に深刻な「うつ病」にまで至るケースはまれであったが、最近は「うつ病」を発症しているケースも認められるようになっている。
-「6月病が職場を襲う」アエラNo.25:6.3.2019より抜粋引用-

2019年06月01日
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