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2020-03-31

135.マインドフルネスと受容について、

   マインドフルネス(mindfulness)とは何か?これは、自分の思考・感情・身体感覚という内的作用を、自身から距離をおいて客観的に観察する能力のことである。これは瞑想(meditation)の実践を基盤とした自己認識訓練の一形態で、信条や観念に関する何らかの宗教・信仰などによるものではない。マインドフルネスは我々のせわしない心から、自分自身を解き放つのに役立つ。日々思考の連鎖に忙殺されると、状況に効果的に対処する能力が損なわれる。これを主体的に改善しようとする方法である。概要は以下の通りである。
1.寛容な態度で関心や思いやりを持って、今この瞬間に注意を払う。
2.苦痛、あるいは否定的な思考・感情・身体感覚であったとしても、判断をせず、変えたり制御したりしようともしないで、ただ自らの内的経験を観察する。
3.自分の思考にとらわれることではなく、自分が何をしているのかだけに専心する。
また、マインドフルネスは痛みを伴う、悩ましい感情・思考・身体感覚の経験を受け入れる力を高め、それらを葛藤すること無く、去来に任せるようにすることにも役立つ。このような経験を違った視点で眺めると、恐ろしいとか耐え難いという印象が和らぎ、特定の状況への反応に関してさらに賢明な決断を行い、最終的にもっと充実した人生を送ることができるようになる。具体的なアプローチは以下の方法がある。
2つの実用的技法がある。マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)と、マインドフルネス・認知療法(MBCT)である。両アプローチとも、ストレス・不安症・うつ病の管理・慢性疼痛・線維筋痛症・悪性腫瘍などの身体疾患への対処という、幅広い問題に有効性があるというエビデンスが増えている(Kabat-Zinnら、1986,1922,1998)。特にMBCTは臨床的に3回以上のうつ病を呈した患者の再発予防に効果的であることが示されている(NICE,2009)。Acceptance&Commitment Therapy(ACT):マインドフルネスの4つの側面を次のように定めている。受容(acceptance)、認知的脱融合(cognitive defusion)、今この瞬間との接触(contact with the present moment)、自己観察(obsereving self)。その狙いは6つの中心的な治療過程を用いて、「心理的柔軟性(psychological flexibility)」を向上させることにある。
ACTの中心的治療過程について、以下のようにまとめる。
1)今この瞬間との接触;現在この場で自分が行っている事を認識し、完全にそれに没頭する。
2)受容;思考や感情に対して、葛藤したり、過度に注意を払ったりせずに、その出現や消滅を受容する。
3)自己観察者;「大局的見地」から自身を眺め、自分とその思考や感情を区別する。
4)認知的融合;一歩離れて自分の思考を観察し、それらを絶対的事実や恐ろしい体験としてではなく、一過性の内的な出来事として見ることができる。
5)価値観;自分個人として何が重要ないし有意義かを明確にし、自らの人生においてどのような人間でありたいかを定義づける。
6)価値ある人生を送るための同意・選択した行動を実行;自分の樹脂する価値観に基づいてゴールを設定し、それを達成するために効果的な行動をとる。

我々は不快な内的経験を避けたり取り除いたりしようと、多大な時間と労力を費やすことがある。このような感情コントロールには以下のような方法を取りやすい。
*自分が退屈で無価値であるという否定的思考を避けるため、抑うつ状態の時に社交の場から引きこもる。
*苦痛な不安を感じたりパニックに陥ったりしないよう、特定の状況や場所を避ける。
*不安を防ぐため、強迫症(強迫性障害)では、精神的儀式や強迫行動を実施する。
*自己評価の低さに付随する苦痛な感情を避けるため、大酒や過食に走る。
*否定的な思考や感情の制御を意図した内面的な手段;前向き思考、「忘れて乗り切ろう」と自分に語りかける、リラクゼーション技法など。
これらの方法は、短期的には否定的な経験を緩和するかもしれぬが、概して効果が無く、長期的に見ると無駄が多かったり自滅的であったりする。ACTは経験を回避する代わりに、マインドフルネスと受容を活用する方法を各個人に教える。

-Lee David著「10分でできる認知行動療法入門」より引用-

2020年03月31日
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