toggle
2021-02-28

146.フレイル(虚弱)注意-テレワークの時、

コロナウィルス感染の状況下により、テレワークを始めてもうじき1年。「会社に行かなくていいとは、こんなに楽だったのか」とテレワークを満喫してきた在宅組に、今、静かな異変が起きている。仕事はリモートが主になっているという50代女性はこう話す。「外出が減って、その分確実に運動量も減っている。スポーツジムに入っているが、案外人も多く、利用を躊躇する。先日久しぶりに自転車に乗ったら足の力が弱っていることに気づき、驚いた」もちろん動かない分、食事の量は以前より減らすように心がけている。別の女性も「以前は電話しながら歩いて移動するなど、多い日で100分くらいは歩いていた。今では在宅の場合、部屋とトイレの往復で200歩ほど。最近地下鉄の階段で息切れする」(30代女性)。さらに若い20代女性でも「外回りがなくなり、在宅勤務になったので運動しなくなった。階段で1階上がるだけでしばらく息切れしてしまう」という有様である。在宅の日の歩数をスマホで確認して愕然とする。たまに出勤すると、それだけで翌日まで疲労が残って、また愕然。身に覚えのあるあなたは、要注意である。昨春緊急事態宣言が出された頃から、コロナの2次健康被害のリスクが指摘されてきた。外出自粛により身体活動の機会が減った。懸念されるのは、筋肉量の低下や基礎疾患の悪化、認知機能の低下などの2次被害である。特に高齢者は、筋肉量の低下により要介護状態になりやすい「フレイル」や「ロコモティブシンドローム(運動器に問題が生じて移動機能が衰えた状態)」にも繋がるとして、スポーツ庁は昨年11月にガイドラインを示し、運動習慣などを通じて予防を呼びかけた。フレイルとは英語のFrailty(虚弱)を語源とした物で、身体的な変化だけではなく気力の低下や社会性の低下という精神的なものも含まれる。久野譜也教授(筑波大学)曰く、「高齢者で特に問題なのは、社会と関わりがなくなり会話が減るということ。会話が減ると認知機能の低下が進む可能性が高い。人と話さないことは抑うつや社会性の低下を来す。逆に言えば昨年2月位から閉じこもっている方は臨床的にはうつ傾向にあると予想できる。ある程度うつが進行していると考えてもよい」。外出が減り社会参加がなくなり、うつ傾向になって寝たきりにつながる。一直線にその状態に進んでしまう状況が、今、社会的に作られていると久野教授は危惧する。「高齢者の話でしょ」、と侮ってはいけない。50代でも「プレフレイル」、つまりフレイル前段階のリスクはあると久野教授は指摘する。
久野教授の研究によれば、40代以降、筋肉は1年で約1%ずつ落ちる。在宅勤務で極端に活動量が減る状態が続くと、筋肉量の減少はさらに加速する。「30、40代でもこのような状況が続くと、60、70代と同じようなことが起こるといってもオーバーではない」。平均的な活動量のデータとしてはコロナ前後で変わっていないように見えても、コロナ下で運動を始めた人と動かなくなった人で二極分化しているという現状がある。一日の歩数が数百歩ということもざらになる。「これはコロナ前の勤労者には考えられぬ歩数です。会社勤務で確実に保証されていた活動量が、すごく消える。これが1年、2年、5年、10年と続くと体への影響は計り知れない」。筋肉量の減少は、ウォーキングだけでは補えず、筋トレも必要となる。
 フレイルに繋がる生活習慣を自己チェックする方法がある。飯島勝矢教授(東京大学高齢社会総合研究機構)の研究グループが考案した「指輪っかテスト」である。両手の親指と人差し指を併せて輪を作り、いすに座って前かがみとなり、膝が90度になる状態で、利き足でない足のふくらはぎの一番太い部分を力を入れずに軽く囲んでみる。輪に隙間が出来るようだと、筋肉量の減弱(サルコペニア)ありとして、筋力の低下している恐れがある。柏市の追跡調査では、「隙間が出来る」と答えた人のグループは、「囲めない」と答えたグループの人より、サルコペニアの率は6.6倍、死亡率は3.2倍といずれも高かったという。フレイルを進行させる要素の基盤が筋肉の衰えである。指輪っかテストでサルコペニアの兆候が確認出来れば、働き盛りの世代もフレイル予備軍になりかかっている、と自覚しておくべきである。
適度な運動をせず、しかも極端な食事制限でダイエットしている若い女性もサルコペニアのリスクが高い。特に10代は筋肉や骨、脳の認知機能も含めて成長する大事な時期である。この年頃にしっかり栄養をとり、筋肉と骨を含めた体造りをしておかないと、女性の場合は閉経後の50歳前後から、ガタガタと体調の不備が出やすくなる。
-「フレイルになりたくない」アエラ21.2.15号より引用-

2021年02月28日
関連記事