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2021-08-02

151.適応障害について、

    適応障害について説明いたします。
適応障害とは、特定のストレス要因に反応して、様々な症状が現れて、社会生活に支障を来す病気といえます。しかし特別な病ではなく、誰でも発症する可能性があります。
最近では俳優の深田恭子さんがこの診断を受けて、休業することになりました。また、皇后雅子さまも長い間、この病を罹っておられたことは広く知られております。
では、いつ起きやすいのか、というと今この時期、この状況が適応障害をより起こしやすくしているといえる。主な理由は3つ。まず異動、就職、入学などの環境の変化が訪れる4月から数か月がたって、知らないうちに溜めていたストレスの影響が出るタイミングであること。次に自律神経の乱れがある。気圧の変動が大きい梅雨や台風シーズンは自律神経が乱れ、心身の不調が出やすい。さらにコロナの影響もある。テレワークで苦手な上司や同僚と会わなくなりストレスが減った人がいる一方で、「親しい人とのコミュニケーションが取れない」「好きな旅行や外食が出来ない」「収入や仕事が減った」「不安を煽るような報道を毎日見聞きする」「運動量の激減」など、新たなストレス要因を抱える人が増加しているためだ。昨年はかろうじてやり過ごした人が、相次ぐ緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置などで、我慢も限界に近づいている。コロナウィルスによる先の見えない状況が拍車をかける。
適応障害の症状は、精神、身体、行動に表れる。精神症状は、抑うつ気分、不安、怒り、焦り、動悸、意欲・集中力低下、イライラなど、身体症状は、不眠、食欲不振、倦怠感、頭痛、メマイ、腹痛など、行動の面では、朝起きにくい、電車に乗れなくなる、暴飲暴食などである。同じような症状を呈するうつ病との違いであるが、うつ病はストレス要因に関係なく慢性的に症状を呈するのに対して、適応障害は明確なストレス要因があって発症する。このため、適応障害の治療では、ストレス要因から遠ざかることが治療のポイントになる。薬物治療が中心となるうつ病とは、少し異なる治療法になる。ただし、発症のきっかけは適応障害でも、抑うつ症状が長引いてうつ病になる人もいる。この場合には薬物治療が主体となる。このため受診時に、どの段階なのかを見極める必要がある。なお、ストレスの度合いと適応障害の起こりやすさは比例しない。他人から見たら些細なことでも、その人にとっては適応障害を発症するほどのストレスになり得る。たまたまコロナ、運動不足、睡眠不足などがあるところに、何らかのストレス要因が加わって適応障害が発症することもある。初めの部分で誰でも発症する可能性があると書いたが、自分だけは大丈夫と過信しないことである。
ストレスマネジメントを日頃から実践するとともに、もしかして・・・と思ったら、速やかに適応障害に詳しい医師に相談することをお勧めする。勤労者の80%が職場でストレスを感じているという調査結果があり、仕事上のストレス要因で適応障害を発症する人はかなり多い。もし、適応障害と診断されたら、ストレス要因と距離をとって、しっかり休養する。就業が難しい場合には、休職も視野に入れる。ある程度回復したら復職を考えるが、復職の基本は職場環境の変更等を勤め先に働きかけることが大切と思う。時々100%回復しないと復職を認めないという会社があるが、いかなる病でも100%回復し元通りになることは現実的ではないと考える。さて適応障害の部下を持った上司が取りがちなNG対応について、「何もしない」「精神論に置き換える」「(この程度で)と自分の価値観で判断する」「自分に任せておけ」の 4点を上げる。「何もしない」とは部下の様子がおかしいことに気づかない人。「精神論」は、ある年代以上にはまだ根強く残っており、「自分の価値観で判断」も、上司が競争に打ち勝ってきた人ほどよく見られる。いずれも適応障害に対する誤った態度であることは想像できる。しかし「自分に任せておけ」はなぜNGなのか。「親身になって一生懸命なのですが、部下を抱えこみ、1対1の濃厚な関係性を作り上げてしまう。(会社に知られると不利になるから)と部下の症状を秘匿する場合もあり、逆に症状をこじらせる」可能性がある。これら上司の共通点は、病気に対する無知である。念頭に置くべきは2点。医学的に正しい知識を身につけること、そして職場の資源を早い段階で利用し、連携を取って組織的に動くことが大切である。
-「その不調は適応障害」の疑い- アエラ2021.7.19より抜粋引用した

2021年08月02日
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