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2021-10-03

153.糖質依存症について、

現在新型コロナウィルス感染症にて、世界は大きな混乱に見舞われているが、我々の世界はもっと前から、もう一つのパンデミックのさなかにある。それは、この半世紀の間に世界中に拡大を続け、長い時間をかけてゆっくりと我々の健康を蝕み、命を危険にさらす深刻な「死に至る病」である。その病は”糖質依存症”であり、結果として肥満が起きる。依存症の権威マイケル・ゴソップ曰く、「宇宙人から見ると地球人は酷い薬物依存症に陥っていて、白い結晶を日に何度も摂取してはハイとなり、それが欠乏すると動揺するように見えるだろ」と述べている。その白い結晶とは、覚醒剤でもコカインでもなく、「糖」である。糖には非常に大きな依存性がある。覚醒剤やコカイン等と同じく、糖を摂取するとドパミンが分泌され、報酬系が活性化する。これが反復されると依存症となるのは、アルコールや覚醒剤などの物質依存症と同じメカニズムなのだ。
その物質が「やばそうなもの」であるかどうか等ということは、依存症とは無関係である。毎日当たり前に摂取しているような、一見無害な物質であっても、深刻な依存症を引き起こす。カーディフ大学アダムズ教授(英国)によれば、「精神賦活性のある物質に限定せず、ある特定の物質の摂取や行動に対するコントロールを喪失した状態をアディクション(依存)と呼ぶ」という考え方が研究者の間では支配的であるとして、糖質に対する依存症の存在を肯定している。つまり、アルコールや覚醒剤などに限定せず、「糖」もまた一つの物質であり、その物質の摂取に関するコントロールが欠如している場合には、依存症と呼べるのである。ベストセラーとなった「果糖中毒」の著者、カリフォルニア大学ラスティグ教授は「糖は安くてうまい毒」だと述べている。我々は糖質に対する認識を改める必要がある。
糖質の過剰摂取が問題である一番の理由は、それが肥満を引き起こすからである。肥満度を表す代表は、BMI(Body Mass Index)であり、日本ではその値が25以上で肥満、18.5以下ではヤセとされる。しかし世界的には30以上で肥満とされている。BMIの算出は簡単で、BMI=(体重)/(身長)2乗 で割った物がその数値である。WHOによれば、世界で20億人が体重過剰であると見積もられており、これは18歳以上人口の約40%にあたる。日本の場合では、成人男性(20~60歳)の31.2%、成人女性(20~60歳)の22.2%が肥満とされている。さらに子どもでは10.7%が肥満児である。
糖質の多い飲食物と聞くと、清涼飲料水やスイーツ等がすぐに浮かぶ。例えば炭酸飲料水500mlには、60gの砂糖が含まれており、これは角砂糖にすると約14個分である。これだけの角砂糖をそのまま食べろと言われると、見ただけでゲンナリしてしまうが、炭酸飲料では平気で摂取出来てしまう。糖質が多く含まれる食品は、他にも沢山ある。特に穀類、イモ類、根菜などが代表的で、白米(茶碗一杯で糖質60g)、食パン(6枚切り一枚で50g)そば(麺一玉で25g)サツマイモ(1個で30g)ジャガイモ(1個で16g)等となっている。茶碗一杯の白米は角砂糖14個を食べるのと同等の糖質を接収していることになる。一日の理想的な糖質摂取量は200~300g前後が目安とされているから、3食1膳ずつ白米を食べるだけで、すでにギリギリの量である。加えて副食や間食、飲料でも糖を摂取するので、我々は毎日糖質を過剰に摂取しすぎている。もちろん糖質それ自体は毒でも何でも無く、むしろ生命と健康の維持に必要な物質である。しかし現代のように安価で大量の糖質が手に入る時代にあって、安易に糖質の過剰摂取続けている場合には、糖が「安くてうまい毒」になるのだ。
原田隆之著「あなたもきっと依存症」-「快」と「不快」の病から引用

2021年10月03日
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