71.マインドフルネス認知療法のテーマについて

 1.ネガティブな思考パターンの確立と増強を防ぐ最適な方法の探索
 うつが再発しないように、ネガティブな思考パターンを強めないようにする方法を探る。ネガティブな心理状態をすっかり取り除くのではなく、定着しないようにするのが目的である。
2.何が思考習慣を駆り立てるのか
 ネガティブな思考は、繰り返し体験された自動的な認知パターン(反芻的であることが多い)から起こる。それらは、うつや問題のある状況を避けようとすることがきっかけとなる。たとえば、次のような認知のモードにとどまることで、これらは習慣化する。
1)自動操縦状態、2)ネガティブな気分を嫌って、ポジティブな気分になろうとする、3)現在の状態と理想的な状態を常に見比べる、4)「言葉」だけで問題を解決しようとする
3.中心となるスキルは何か
 中心となるスキルは、このようなパターンからいかに離れるか、離れ続けているかということである。基本は、マインドフルになり受け流すことである。受け流すとは、何かを得ようとしたり、何かを嫌ったりすることからの自由になることといえる。このプログラムの目的は自由であり、幸福やリラクゼーションなどではない。もちろんそれらが結果として得られる分にはかまわない。
4.体験的な学習
 スキル・知識体験をすることでのみ身につけられる。頭の知識は役立つであろうが、それのみでは全く不十分である。スキルの習得には、体験を幾度となく繰り返すことが必要である。十分に体験するには、次の2点が必須条件となる。
 1)セッション外でもしっかり練習をする2)スキルを身につけるためには、うつに関係しそうもない思考、感情、身体感覚にも気づき、うけながすこと。
5.力づけ
 参加者を力づけることは必要不可欠である。その際身につけたスキルは、インストラクターからの教えではなく、参加者自身の体験によるものであるということや、参加者は自分自身についての「エキスパート」であるということを含んだ力付けを行う必要がある。 
6.何が学ばれるのか?
  集中:特定の対象へ注意し続ける能力は、MBCT(認知行動療法)のすべての側面 にとって中心となる
 思考・感情・情動感覚へ気づき/マインドフルネス:これは、役に立たないパター ンに気づくこと無しには、それらを意図的に流すことができないために重要である。それ以外にも、その瞬間にあること、脱中心化、受容・非嫌悪・非執着、受け流し、到達目標を持たないことなど、いくつかの要素がある。
Zindel V.Segal,J.Mark G.Williums,John Teasdale,:Mindfulness-based cognitive therapy for    depression.堀川房子訳「マインドフルネス-認知療法」北大路書房より抜粋引用

2014年12月02日

69.マインドフルネス-脆弱性理解の基本

    いくつかの研究の結果、健康な人々も実験的な誘導によって軽いうつ気分になり、記憶のネガティブバイアスが生じることが分かった。今までに経験した楽しい出来事は思い出しづらく、ネガティブな出来事が思い出しやすくなっていた。このようなバイアスは臨床上の「うつ」にも認められることは分かっていたが、そのバイアスがなぜ生じるのかについては分からないままだった。実験結果は、うつが記憶に与えるネガティブバイアスは、決してネガティブな出来事の量の多さが原因ではないことを証明していた。ネガティブな出来事は確かに起こるが、うつ病者はその悲劇に加え、人生のネガティブな側面により注目し、どんなポジティブな側面からも目をそらしやすいという、気分によって誘導されたバイアスにも対処しなければならないのである。 
   この結果は脆弱性に対する別の見方を示唆した。うつから回復した者とうつ未経験者との重要な違いは、気分が落ち込んだ時に、何が頭をよぎるかである。うつ病の時に、患者は気分の落ち込みと、ネガティブな思考の両方を経験している。ということは、もしうつの最中に、両者の間に学習性連合が起こっていたとしたらどうなるだろうか。学習性連合の形成後は、一方(気分)が生じただけで他方(思考パターンの変化)がもたらされることになる。以前うつを経験した者にとっては、毎日の気分の落ち込みは普通のレベルのものであっても、深刻な結果を招く可能性がある。
  ティースデール(Teasdale, J.D.)はこれを「抑うつ的処理活性仮説」(differential activation hypothesis)と名付けた。これは現在の気分の落ち込みが、以前のそれと結びついた思考パターンを再活性しやすくなる、という考えである。思考パターンは人によって異なり、それぞれの過去の経験に依存しているだろう。彼は、この思考パターンへの入りやすさにおける個人差が、うつの再発を理解する助けになると説いた。ほとんどの人は時々生じる気分の落ち込みを無視できるが、うつ経験者はわずかな気分の低下でも破壊的なほどに思考パターンを変化させるかもしれない。これらの思考パターンは多くの場合「私には価値がない」「私はおろかである」といった全般的で否定的な自己評価を含んでいるだろう。
  これを実証する実験が行われた。実験では、うつ病から回復した人を気分誘導の有無で分けて査定した。多くの研究結果は、実験的にもたらされた気分の落ち込みが同等であった場合でさえ、うつ気分はうつの既往歴をもつ人に、より大きな影響を与えていることが分かった。うつ病経験者には過度の認知バイアスが生じていたのである。 このように、大うつ病の既往を持つ者においては、軽度の落ち込みはより強くより持続的なものへと発展し、その後の大うつ病の発症リスクを高めることになる。

  
 Zindel V.Segal,J.Mark G.Williums,John Teasdale,:Mindfulness-based cognitive therapy for    depression.堀川房子訳「マインドフルネス-認知療法」北大路書房より抜粋引用
2014年10月04日

35.レジリアンスとは何か、少し詳しい説明

  レジリアンスを簡単に日本語に言い換えれば、回復力とします。回復力とは何か?欧米では、児童虐待や両親の離婚など、様々な心理的、身体的ストレスにさらされている子供たちにとって、キッズ・ストレスマネジメントなどと呼ばれている子供向けのストレス対処方法が必要な時代になっている。同じような境遇に置かれても、強いストレスにうまく対応できる子供と、ストレスに打ち負かされて様々な心の問題を生じる子供ではどこが違うのか。ストレスに対するレジリアンスはかなり個体差があることが心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究などからも明らかにされている。たとえば、サウスウィックらは、ベトナム戦争中に撃墜されて、6~8年間も捕虜として、拷問や独房への収容など極度のストレスを受けながらも、うつ病やPTSDを発症しなかった750人の男性パイロットについて研究報告している。これには神経心理学的な検査や、脳画像検査、DNAの検査などが含まれている。この研究から、これらの強いストレスに耐え抜いた人の心理的特徴、すなわちレジリアンスとして、10の項目が明らかになった。1楽観主義、2利他主義、3確固とした道徳的な基盤を有している、4信仰心や霊的なものを信じている、5ユーモアがあること、6自分の役割モデルを持っていること、7他人との社会的サポートを有していること、8恐怖を直視できること、9使命感を有していること、10何らかのトレーニングを受けていること、である。
 こうしたレジリアンスという概念は、遺伝子や細胞レベルから、心理社学的なレベルにまたがる幅広いものであり、うつ病治療における抗うつ薬の果たす役割や、回復モデルとして、レジリアンスという視点で捉えると、臨床的にも有用である。スイスのスタッセンが行った研究によれば、7種類の異なる抗うつ薬の効果を見るために、プラセボ比較対象試験で、治療開始からどのくらいで効果発現があるかを確かめたところ、ハミルトンのうつ病評価尺度で、総点数が50%減少するのには、平均して18~20日であった。これは大変早く効果が現れているもので、抗うつ薬はうつ病からの回復に必要な状態への引き金、すなわち回復軌道に乗せて、それを維持する役割を果たしているという。患者が本来有する心理社会的、および生物学的なレジリアンスを高めることを目指した治療法や治療薬の開発が望まれる。 

                    -田島 治著「抗うつ薬の真実」より引用-
2011年12月06日

4.レジリアンスについて

最近精神科関連の専門書には、この言葉が良く出てきます。日本語に言い換えると、「抵抗力」とか、「反発力」とか、あるいは「抗病力、病気になりにくさ」などと言われております。そもそもこの考え方が生まれてきた背景は何かといえば、悲惨な環境で育った子供達のその後の成長を見ていると、精神的な病が発症してしまう子供と、案外たくましく育って、精神的な病にならない子供がいることから、悲惨な環境で育った子供でも、全てが何らかの病になってしまう訳ではないということ、そして逞しく育った子供と、病になってしまった子供の違いは何処にあるのかを、探ってみる研究が盛んに行われている訳です。昨今言われていることの一つは、病気になってしまった事の、重要な要因の一つは、元々のその人の気質が関係しているらしいこと、そしてその気質は、ある程度その人の親から受け継がれていること、しかもそこに環境的な要因が深く関わって、発病してくること。一方、病気になりにくい人の場合、親から受け継がれている気質がもともと抵抗力があって、少しくらいのことでは平気であり、病気の発症にまで至らない事が多いということだそうです。これは昔からの普遍的な法則の一つで、要は遺伝と、環境の問題が潜んでいるというのです。これらを踏まえて、例えば、うつ病になりやすい人がいるのかという疑問が浮かびます。気質的に見ていると、ある傾向のある方は陥りやすいと言えそうです。また、一旦回復しても、再発しやすい方の中には、この気質が潜んでいる様に思います。ではどうやって罹りにくくするのかという方法ですが、これは根気強く、少しずつ気質の改善・変換を行っていくこと、そして、考え方を変える訓練を積み重ねていくことが勧められます。マスコミで言われている認知療法や、あるいは根気強い精神療法を行っていく方法です。もっと簡単にできる方法はないのかと思いますが、人の本質に係わる問題ですから簡単な方法はありません。本当に効果があるかと言う疑問には、根気よく治療を続けていると改善する方がいるとお答えします。治療者と、患者さんの一対一の関係の中で、話し合い、工夫しながら、少しずつ変わってもらうような働きかけをしていきます。幸い今話題になっている、平成22年4月以降の診療報酬改定には、この認知行動療法が保険診療の範囲に入っております。薬物と同程度の効果があるとされており、より確実な治療を行うためには両者とも必要な治療法と考えます。
2010年07月09日

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