11、自己愛型パ-ソナリティ-障害について

 正常な自己愛とは何を言うのでしょうか。本来皆自分自身がかわいい為に、自分を取り巻く世界がすべて自分の思い通りになればよいと考えている部分があります。このために我がままを言ったり、見栄を張ったり、背伸びをして偉そうなことを言ったりしますが、現実の社会や世間ではほとんど思い通りには行かないことが多くて、次第に自分自身の限界を知ることとなり、そうやって社会や世間と折り合いを付けて自己愛の修正を受けながら社会的な成長をしてゆきます。つまり等身大の自己が出来上がるのです。しかしこの自己愛が正常に発達しない人は、このバランスが崩れてしまい、理想の自分と現実の自分が2極分化してしまいます。理想と現実の間を激しく揺れ動く為に、数々の症状が引き起こされてくるのです。 理想の自己を示す特徴は万能感・努力しないでも結果が出てくると思いこむ・仰ぎ見るような賞賛を求める・自分が特別な存在である事を周囲に求める・外的価値しか価値をおけない等です。一方現実の自己については無能で取り柄がない・何の価値もない最低の自分・無力・空虚・絶望などが主な特徴です。 これ等から導かれることは地道な努力が出来ない・結果主義・全か無かの発想・平凡や普通や並は受け入れられない・特別であること、他と隔離した存在であることを求める・他者は敵か家族か使用人の3種類しかいないのです。こうした特徴のある人は順調なときには人一倍頑張るけれど、思い通りにならぬと、停止してしまい、挫折に弱いのです。臆病で嘘つき、自己中心的な傾向があり、劣等感と優越感が同居しております。 具体的な症状としては抑うつや、衝動的な激しい怒り・引きこもり・強迫的な傾向が出現します。関連する障害として、摂食障害・うつ症状・強迫性障害・社会的引きこもりなどが挙げられます。

                       - 市橋秀夫先生のご講演より引用-
2010年08月23日

7.青年期精神構造(10代~30代前半)の変化について

 著名な精神療法家の成田善弘先生の分析の一部をご紹介致します。過去20年位前から若者達は全く考え方や行動が変わってきた。1)女性患者の増加、とくに過食が目立つ、2)行動上の問題を持つ患者の増加、不安や葛藤を自己の内側に保持したまま悩む古典的な神経症タイプの患者が減って様々な行動上の問題(暴力、自傷、性的乱脈、薬物乱用、不登校など)を示す患者の増加、3)強迫的性格特徴を基礎にもつ病態の増加、うつ病や家庭内暴力などの患者には昔の強迫性格と比べて強迫性格は脆弱でありしばしば自己愛が露呈し一層の病態化や退行に陥りやすい、4)恥ずかしいと訴える患者が減り恐いと訴える患者が増加した、恥とは現実の自分があるべき自分に及ばぬ事が自他共に明らかな時に感じられるもので、近年の青年期患者は幼児的万能感的な自己愛を持ち続けており自我理想の形成に失敗しているから恥ずかしいとは言わない。幼児的自己愛はそれが傷つけられると「恥」ではなく「怒り」を生じる。過去10年くらいの間には、恐いという訴えより「ムカツク」「キレル」という訴えの患者が増えた。彼らは心の中に納めきれない感情を「ムカツク」という形ではき出し、さらに「キレル」と怒りが生に露呈してコントロール不能となり行動上の問題を生じる。歯止めとしての強迫的防衛が弱体化している。一方で全面的に「ひきこもる」若者達も増えている。最近の若者達は怖がって「ひきこもる」か、「キレ」て暴発するかに両極化しているようにみえる。この両極化は一人の患者の内部にも存在している。さらに心の表層と深層の区別が失われ、深層にあるべきものが表層に出てきてしまった。たとえば親や教師への殺害願望を容易に口にする少年、また強い禁止が働かず実行してしまうこと、さらに容易に別人格となり、別人格を出現させることで人格の統合への努力を放棄し、それにより内的葛藤から免れている。さらに他罰的な姿勢の患者が増えた。
 
-成田善弘「伝統的精神療法は近年の青年期の変化に対応できるか?」臨床精神病理誌より引用ー

2010年07月26日

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