16.高齢者の睡眠薬の使い方について

 最近少し心配な患者さんが受診されてきます。年齢は大体60代~70代の患者さんです。どの方もなんらかの身体疾患にて、他の科をかけ持ちして受診されております。そこで思わず「眠れない」という話をすると、ほとんどのドクタ-は「軽い睡眠薬」を出してくれる事が多いのですが、これがくせ者です。夜中にトイレへ起きた時などにふらついたり、あるいは朝起きてみると部屋の中が散らかっていたり、妙なものが転がっていたりと不思議なことが起こっております。夜間の寝言や振る舞いについてわずかに記憶がある場合もありますが、ほとんど良く覚えておりません。何が起こったのかと思っている内に、毎晩こんな状態が続きまして、家族の方が「おかしい」と心配されて、受診を促されてやってきます。ご本人に詳しく聞くと「軽い睡眠薬」を使用しておりまして、どうやらこの「軽い睡眠薬」が夜間のせん妄状態を起こしているらしいのです。試みに軽い睡眠薬を止めて、しっかり睡眠をとれる薬を使っていただくと、ピタリと無くなってしまいます。ここで注意することは、安易に軽い睡眠剤を使わないこと、また適度な運動や食生活などを心がけて自然な睡眠を目指すこと、それでも眠れぬ時には、むしろしっかりと眠れる睡眠薬を使った治療を受けること、しかしよく分からぬ時には専門家に聞くことが大切と思います。
 「軽い睡眠薬」は大体睡眠導入薬が多くて、比較的短時間(大体1.5~2時間)に代謝されてしまう薬です。寝付きをよくするための薬ですから、その薬の血中濃度が低くなった後の浅眠状態の時に、このようなせん妄状態を起こしてしまうのです。この現象は若い人には少ないのですが、高齢者になると出現しやすくなります。高齢者の方は「軽い睡眠薬」にはご用心下さい。

2010年10月31日

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