91.ベンゾジアゼピン系薬剤のリスクとSSRIについて、

    ベンゾジアゼピン系薬剤(以下BZDと略す)は、チエノジアゼピン系(エチゾラムなど)も含めて、精神科のみならず、複数の科で広く処方されている。本邦での処方は多く、安易に処方されすぎているといってもよい。BZDのリスクがどのようなものか概説した。
 まず、BZDは、常用量依存が問題とされる。BZDの依存スコアは、大麻やアンフェタミンを上回り、アルコールをわずかに下回る程度である。本邦でBZDが多く処方されている理由は、第1にかつてのバルビツール酸系よりは安全なこと、第2は、たとえば、身体疾患から説明のつかない症状を訴える患者を眼前にした際、臨床家が心因性だと想定してまず処方されるのがBZDであるということ。臨床上、この論理の流れには納得できるものの、問題は初めにBZDを処方することと、一度処方したBZDが年余にわたり処方され続ける傾向があること。さらに、重要なことは、BZDの効果は対症療法的であり、決して疾患そのものを治癒させるものではないこと。
 不安・恐怖という用語は厳密には定義が異なるものの、一般的な使用では不安と恐怖は共通する特徴を持つため、同様にとらえうる。恐怖の神経回路はある程度想定されており、最も重要な役割を担っているのは扁桃体である。その興奮により、血圧、心拍、呼吸数、すくみ行動、副腎皮質ホルモンなどの増加という、恐怖反応が惹起される。BZDとSSRIはともに扁桃体を抑制することで効果を発揮すると考えられる。
BZDは依存性が高い故に、中断により様々な症状が出現する。投与前に状態に戻る「再燃」、投与により押さえられていた症状がより強く表れる「反跳現象」、元の症状に加えてそれまでなかった症状が出現する「離脱症状」の3つが知られている。しかし、ほとんどの場合、経時的に症状は軽減するので、BZDを再開しないことが望ましい。BZDの中でも、半減期が短く、高力価であるほど依存性が強いことが知られており、その最たるものはエチゾラム(デパス)である。BZDの長期使用によるリスクとしては、依存のほか、高齢者の転倒や骨折、交通事故死のリスク、せん妄惹起作用もある。長期使用になりがちであることを考慮し、睡眠目的・鎮痛目的・こわばり軽減目的として、BZDを安易に使用すべきではない。また、抗不安目的としても、病態にもよるが、BZDを第一選択薬にすべきではない。実際に不安障害の第一選択薬はSSRIである。しかし、効果の面でSSRIがBZDより有効であるというエビデンスはない。リスクにおいてもSSRIが完全に安全であるわけでもない。また、これまでBMJ誌上でBZDが認知症のリスクを上げるという数本の論文が出たが、2016年に発表された最も大規模で最も信頼に値する研究では、「BZDと認知症のリスクは明らかではない」とされた。逆にSSRIにより、認知症のリスクが上がる、またTCAはむしろ下がるという論文もあって、今後の議論の余地がある。

木村竹男「ベンゾジアゼピン系薬剤リスクとSSRI」講演要旨から抜粋引用  -第550回月例研究会講演、神奈川県保険医新聞より。

2016年08月06日

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