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106.代替医療解剖-ホメオパシーについて、その真実は?

  ホメオパシーとは、「類が類を治療する」=(毒をもって毒を制す)というような理論的基礎をもつ病気の治療体系である。ある症状を治療するために、健康な人に大量に与えたときにそれと同じ症状を引き起こす物質を、ごく微量含むか、或いは含まない薬剤(レメディ)を用いる。風邪から心臓病まで、大抵の病気は治せると主張する。1790年にハーネマンという医師が考案した治療法で、毒となる物質を何十万倍にも希釈した薬(レメディ)を、よく振ることにより効果が高まると主張する。個人に合うようなレメディを見つけて処方する施療者をホメオパスと呼ぶ。この希釈と震盪を合わせたプロセスをポテンタイゼーションと呼ぶ。毒となる物質とは、たとえば動物を丸ごと使う物(地蜂など)、動物の分泌液(蛇の毒・オオカミの乳など)、塩から金まで、鉱物に由来するレメディもある。レメディには病変の一部や病原体も使われる(細菌・膿・吐瀉物・腫瘍・糞便・イボなど)。これらホメオパシーのレメディは、かなり気持ちの悪い物が使われていることもある。しかしこれらの物質を何十万倍にも希釈して、患者に投与する。この治療法は1982年~1992年の十年間で、フランスでは総人口の16~36%、ベルギーでは人口の半数が日常的に利用している。また、イギリスにはホメオパシーの本部があり、インドには30万人のホメオパスがいて、300の病院でホメオパシーの治療が行われている。アメリカでも1987年~2000年までの間に、ホメオパシー業界の売り上げは、3億ドルから15億ドルへと増加している。では、果たしてレメディは効果があるのか?1988年に世界一評価の高い科学誌「ネイチャー」の載った論文が衝撃的であった。「きわめて低濃度のIgE抗血清により、ヒトの好塩基球の脱顆粒が引き起こされる」という大胆なタイトルであった。これを解説すると、有効成分を全く含まない超高濃度希釈溶液が、確かに生物の身体に影響を及ぼすことになる。そんなことが起こるのは、有効成分の記憶を水が保っているときだけだ。この論文を書いたのはフランスの科学者ジャック・バンブニストである。バンブニストはレーシング・ドライバーであったが、背骨を痛めたのがきっかけで、医学研究の道に入った。ネイチャーは再現実験を行うように他の研究者に依頼した。同時に、調査団をフランスの研究所に派遣して、厳密な二重盲検法により真実を明らかにした。結果はホメオパシーで処理された物と、ただの水で処理された対照群では、全く同じように反応した。つまりホメオパシーの効果を裏付ける根拠が示されなかった。ネイチャーは、バンブニストの研究方法の問題点を幾つか指摘した。たとえば、実験データを批判的に査定せず、欠陥のあるデータを不適切に報告してしまったこと、あるいはバンブニストの最初の論文に関係した研究者のうち、二名はフランスの大手ホメオパシー企業から研究資金の一部を提供してもらっていたことを、最初の段階で明らかにしていなかったこと、究極的には、バンブニストとそのチームが自己欺瞞に陥って、実験を厳密に行わなかったことを強調した。これに対して、バンブニストは自分が二年間に渡り蓄積してきた成果を否定できるはずが無いとして、核心部分は頑として譲らなかった。いずれはノーベル賞を受賞して、研究が認められるだろうと信じて疑わなかったが、実際には「イグノーベル賞」をもらっただけであった。彼はもう一つイグノーベル賞をもらっており、イグノーベル賞を2度受賞した初めての科学者になった。1999年、王立ロンドンホメオパシー病院の研究者ヴィッカーズは、ホメオパシー・レメディに関わる120篇の研究論文を調査した結果、いかなるホメオパシー効果も、別の研究者によって再現されないという事実であった。
-Simon Singh,Edzard Ernst著「代替え医療解剖」より抜粋引用-

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