190.英国の医療の現状について、
今回は、アエラ2024.11.4号に載っているブレディーみかこさんのeyesコラムをそっくり拝借します。日本の場合には、健康保険制度がしっかりと機能しており、日本中どこの地域でも、保険証があれば、およそ2~3割の自己負担で診療を受ける事ができます。一方英国では医療費はほとんどが国の負担です。しかし医療費を極端に削減した結果が、ここに述べられた医療状態になっております。日本では幸いにもこれほど酷い医療体制に、今のところはなっておりません。しかし今後、さらなる保険診療の緊縮・削減が続くと、こんな風になるかもしれないという怖い話です。
英国のA&E(Accident&Emergency)に行った。 つまり救急医療科である。40度を超える熱と嘔気が続いていたので、幸運にも私は個室に隔離された。個室とはいえ、病室ではなく、医師の数が足りていた頃は診察に使われていただろう部屋だ。3時間待たされて、ようやく医師が来て採血が行われ、また2時間待たされて点滴を打った。それから4時間後に2本目の点滴が始まり、入院が決まった。私が個室で「忘れられているのでは」という不安と闘っている間、扉の外ではそれどころではない世界が展開されていた。
入院病棟に連れて行かれる時に私はそれを見た。
まず扉を開けたところに水たまりがあり、紙タオルが数枚突っ込まれていた。誰かが失禁したのだ。でも、清掃する人がいないから誰も踏まないように紙タオルを突っ込む。待合室には患者が溢れ、多くは床の上に座り込んだり、寝転がったりし、吐瀉物の中に紙タオルが数枚突っ込まれているのも数カ所見た。
待合室から溢れた患者はずらっと廊下に座り込み、列はエレベーターの前まで続いていた。
頭にこびりついているのは、車椅子に乗った、長い金髪の若い女性だ。両目からポロポロ涙をこぼしながら、「うおおおおお、おおおおお」と我を忘れたように大声で叫んでいた。痛いのだ、つらいのだ、早く何とかして欲しいのだ。
個室で待っている間、患者と医療スタッフの会話が聞こえた。
「これじゃ患者が危険だろう」「危険ですよね」
「患者がこんなにいるのに、看護師も医師もいないじゃないか」「いませんよね」
「せめて説明があるべきだ」「あるべきですよね」
「こんなのは間違っている」 「間違ってますよね」
半分泣きそうな声を張り上げて言葉を返している女性は、まだ英国に来て日も浅そうなたどたどしい英語を話していた。
百聞は一見にしかず、だ。
NHS(国民保険サービス)の惨状は記事で読むが、14年間の緊縮財政が「現場」に何をしたか、私は本当には分かっていなかった。
英国政府はNHS修復を謳うが、緊縮で壊したものは、緊縮しながらでは直せない。
「現場」の緊迫感が政治になさすぎる。
まるで某国の医療体制の将来を見ているようで、本当に恐ろしい現状であると感じました。
絶対にこんな状態にしてはいけないと強く考えております。
-アエラNo.50 24.11.4 より引用-
2024年11月01日