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2010-12-14

17.PTSD(心的外傷後ストレス障害)について

  最近の研究によると、PTSDと診断された約半数がPTSDの診断基準に該当しないという実体が明らかにされております。医師による安易なPTSDという診断が行われていることにより、本来の精神疾患の見逃しや司法の判断にも影響を与えることを肝に銘じて、慎重に診断すべきであるという警告です。ではPTSDとはどのような疾患でしょうか。ICD-10(WHO国際分類)やDSM-4(米国精神医学会分類)によれば、非常に強い衝撃的な出来事(実際に危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を1度または数度経験していること、自分または他人の身体の保全に迫る危険をその人が体験し、目撃し、または直面した)、その人の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものであること、この強い外傷的出来事から数週~数ヶ月にわたる潜伏期間(6ヶ月を越えることは希)を経たあとに発症する。また6ヶ月以内にその症状が起きたという証拠があること、また外傷の証拠に加えて、回想、白昼夢、あるいは夢による出来事の反復的、侵入的な回想あるいは再現がなければならないなど、かなり厳しい診断基準です。それ以外にも診断するためにはいくつかの典型的な症状群がありますが、研究によれば、不適切な診断には1)心的外傷の強さが軽度か中等度のものが3割、2)外傷体験自体より性格傾向など個体側の影響が関与している事例が臨床例で3割、法的書類で5割、3)外傷体験から発症までの期間が1ヶ月以内のものが5割~この場合はPTSDではなくて急性ストレス障害~を占めるなどの問題点が指摘されております。いずれにせよ、この診断は危うく死ぬかあるいは重傷を負うような瀕死の外傷体験を経験した人に対して為されるものであり、単に外傷体験があるからというような病歴でこの診断はしません。

2010年12月14日
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