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2020-01-01

132.難治性うつ病を治すために、その2.

     新年明けましておめでとうございます。
最近多剤を長く飲むことで生じる問題が指摘されている。そのため、薬は一切飲みたくないと考える方が多いように思う。しかし、多剤が問題なのは、薬の使い方が悪いのであり、薬そのものを全部否定しているわけではない。ここを勘違いしている方がよくいらっしゃる。薬は副作用もあるが効果もある。薬を飲めば治るのに、最初から拒否してうつ病に苦しむ人がいるのは残念である。自己判断で飲むのをやめて、再発を繰り返す人もいる。いずれもうつ病を長引かせるだけである。薬を全く飲まないのではなく、回復につながる薬は十分な量を飲む必要がある。薬にはそれぞれ期待できる役割がある。たとえば抗うつ薬には感情や意欲を変化させて、不快な出来事を感じにくくさせる、心のガード効果がある。心がガードされると回復プロセスが促進する。また、抗うつ薬は抗うつ病薬ではなくて、うつの症状に効く。他の多くの薬と同様で、病気を根本から治すものではなく症状に効く。たとえば高血圧薬は、高血圧の原因に直接作用するものではなく、血圧を調節しているメカニズムに作用して、血圧のコントロールをしている。また、双極性障害であれば、一生薬を飲み続ける方が良いのは、双極1型(激しい躁と重いうつがはっきりしているタイプ)に当てはまる。2型の場合、一生飲み続ける必要は無い。心の病気は薬物療法・精神療法・リハビリテーションが必要となる。
 さて、心の回復力をつけるにはどうしたら良いか?うつからの回復とはどういうことなのか?これは無気力や絶望という気持ちの底から抜け出し、多少落ち込むことはあっても、立ち直れるようになること。そのためには「まあ、いいか」と思える楽観主義になりたいものである。歩き続けるために希望を持つ。3年5年で良くなる人は大勢いる。7年も経てば医師や薬と縁が切れる人もいる。ゴールは普通の生活ができること、必ずしも以前の自分に戻るとは限らない。楽観主義やストレス抵抗力がつき、以前とは別の自分になっているかもしれぬ。この楽観主義とは物事を深刻にとらえない、今を生きること。そしてストレス抵抗力とは受け流せるようになる、鈍感力というようなことを身につけること。
 そして、回復のプロセスとは、3段階で考えること。まずは気分が良くなる第1段階、食欲や睡眠が改善してくる。但し、少しの活動で心身ともに疲れて、1週間ほど寝込むこともある。気分が良くなっただけで、体力や持続力は落ちていることを認識すること。ついで、70~80%の回復時期の第2段階とは、意欲や関心が改善してくるが、現実に直面して不安になるなど不安定さが残っている。ここで治ったと錯覚する人は多いが、体力、持続力はないので、働き過ぎで後戻りすることもある。まだ100%ではないと認識すること。ソフトランディングの第3段階は、再就職する人もいるが、ここからがスタートラインと考えること。体力や持続力の回復は3ヶ月単位で進んでいく。当初は60点以下にならない程度の仕事をするつもりで行く必要があると認識すること。ここで大切なことは、嫌なことを延々と考え続けることは止めて今だけを見つめること。繰り返し嫌なことを考えることは脳のエネルギーを消費して、脳と心を疲れさせる。うつから抜けるためには、過去や未来のことは考えずに、今日のことだけを考えるように意識する。繰り返しを断ち切る方法は、繰り返している自分に気がつくこと、気がついたら止めること。「やめよう」と意識するとある程度止められる。代わりに考えるのは今のこと。そして5感を使って感じること。これがコツです。   

 田島治監修-なかなか治らない難治性のうつ病を治す-より抜粋引用  

2020年01月01日
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