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2017-07-03

102.日本人の体質-欧米人とはこんなに違った。No.1

 今回は、広く生活習慣病などの話をしてみたいと考えました。まず、テーマに挙げた「体質」とは何か。昔はその人の体に本来備わった特徴を体質と呼んだ。しかし、本来備わった特徴のことであるなら、一生を通じて変わらないはず。しかし実際にはこれまでなんともなかった人が突然花粉症になる、ランニングに打ち込むようになったら風邪を引かなくなった、というように体質が変わったとしか考えられない現象が起きる。体質とは、「遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成される」ものと考えられる。ここでいう環境要因とは、食生活、喫煙、気候、細菌やウイルス、紫外線、運動、ストレス、睡眠など、体に影響を与えうるすべての出来事と行動を含むと定義する。まず、大体の病気は複数の遺伝子が関係しており、遺伝子変異が1カ所で起きただけで病気が発症することは希である。体にはがん化した細胞や、人体に入り込んだ病原体を殺したり、体外に追い出したりする防衛機能がある。この機能にも遺伝的素因にもとづく個人差があるので、同じように危険にさらされても、誰もが病気になるわけではない。一卵性双生児の研究によれば、(一卵性双生児は全く同じ遺伝子を持っているので)成長するにつれて、2人揃って同じ病気になる確率は意外なほど低いことが判明した。では、なぜこんなことが起きるかと言えば遺伝子にはスイッチがあり、生活習慣を含む多くの環境因子がスイッチを入れたり切ったりすることで、遺伝子の作用を調整している。この仕組みを「エピジェネティクス」と呼び、病気の発症に大きな影響を与えている。病気と関連する遺伝的素因を両親から受け継いでも、成長してから遺伝子にキズが付いても、何らかの環境要因が遺伝子の作用にブレーキをかければ病気になることはない。
 ここで、病気にもお国柄があるということを紹介する。たとえば、皮膚がんは、日本は最も少ない国の一つで、オーストラリアやニュージーランドと比べると発症率は1/100しかない。その一方でアトピー性皮膚炎は同じ黄色人種の韓国や香港と比べて3倍くらい多く、ほぼ欧米と同じ頻度である。そして、がんは国により発症率の異なりが多く認められる病気である。たとえば、血液のがんといわれる慢性白血病は、慢性骨髄性白血病と、慢性リンパ性白血病に分けるが、慢性リンパ性白血病のほうがずっとおとなしい病気で、欧米では慢性リンパ性白血病が多い。一方日本では、9:1の割合で悪性度の高い慢性骨髄性白血病のほうが多い。2014年にWHOが発表した世界がん報告によれば、日本の人口は世界人口の1.8%であるのに、肺がんの発症率は世界の5.2%、肝臓がんは4.6%、そして胃がんは11.3%を占めている。つまり日本は、胃がん、肝臓がん、肺がんになる人が多い国である。中でも、胃がんは日本を含む東アジア地域が世界一多い地域として知られ、発症率は北米の7倍。中でも高いのは日本であり、ピロリ菌の感染が関係している。ピロリ菌は欧米人やアフリカ人にも感染するが、ピロリ菌の種類が違っており、欧米型はあまり胃がんを起こさない。肝臓がんも同様で、世界の肝臓がんの3/4が中国、インド、日本を含む東・中央アジア地域で発生している。原因は肝炎ウィルスで、これに感染している人が多いためだ。
-奥田昌子「欧米人とはこんなに違った日本人の体質」より引用-

2017年07月03日
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