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2019-10-31

130.「うつヌケ」のその後、について、

「うつヌケ」の田中圭一さんについて、インタビューが載っております。少し抜粋を。私が好転したきっかけは、自らうつを脱出した経験のある精神科医(宮島賢也)の本に出会ったこと。そこには「朝起き抜けに自分を褒める言葉を唱えよう。自分を好きになろう」とありました。アフォメーション(肯定的自己暗示) という方法です。朝起き抜けだと、言葉が潜在意識にスッと入るという。そんなのオカルトやん、と最初は思ったが、とにかく信じて3週間続けたら、気持ちが上向きに。2ヶ月もたつと、完全に良くなっていた。万人に効くとは思わないが、自分には合っていたようだ。ただ、ある日カグッとぶり返す「突然リターン」に見舞われて、「またかよ!何でだ?」と焦りました。わかったことは、うつはジグザグに上る階段のように回復していくが、ストンと落ちるポイントがあるということ。それでは、どんな時に起こるのか、必死に調査を始めた。私は日記のように、その日の気温と「すごくつらい/ややつらい/普通」という気分の評価をエクセルで記録していた。なんとしても気分の落ち込む時の共通項を見つけたかった。結果、気分の落ち込むのは、3月、5月、11月で、どうやら原因は「激しい気温差」だと判明。このからくりを発見したことで、一気に目の前のモヤが晴れたような気分になった。気温差が10度もあるような時期には、未だに気持ちが落ちることがある。最近の台風の時もそうでした。うつは、寛解という言い方をしますね。症状が落ち着いて安定している状態です。私の場合も、完治ではないかもしれません。忙しさも、落ち込みの原因になります。いまは仕事を絞るなど、自分なりに工夫しています。ただ、うつトンネルのど真ん中と明らかに違うのは、落ち込みの原因が分かっていること、出口が見えていること。気温が安定してきたら直るぞ!大事な判断は今ここですべきじゃない、と注意報みたいな感じを持てる。自分にとってうつ状態を招く引き金や法則を知っておくことは有効です。
もう一つ、うつを抜けるポイントは、「自分は誰かから必要とされている」という気持ちです。知人はネコを飼い始めて、すごく心の支えになっているそうです。自分がいなければ死んでしまうと。私もいま、京都精華大学のマンガ学科で教えており、若い学生たちに頼られるというのは、すごくメンタルに良かったと思っている。うつヌケにはミュージシャンや学者という16組17名のエピソードも載せました。色々なパターンがあると知ることができた、という声の一方で、マイナスの反響もあった。この人たちは社会的な地位や家族の支えがあるじゃないか、「自分は必要とされる場なんて全くない」という人も沢山いらっしゃる。
最近、私は2つの提案をしている。1つは、日常で「小さく褒められたこと」を心の中で反芻すること。たいしたことでなくても構わない。たとえば、私は大学で「漫画家さんなのに、事務処理能力高いですね」と言われた。サラリーマン経験があればなんてことはないですが、「ああ、僕は能力が高い、高い」と日に何度も唱えてしまう。もう一つは、「落ち込んだらおいしいものを食べに行く」。効果としては、「ああ、おいしかった」と満足するのが半分。もう半分は、お店を出る時に、店員さんに「おいしかったです!」と伝えて、「どうもありがとう」が満面の笑みで返ってくること。この「いいことしたぞ感」は大事です。照れくさければ、仏頂面でもいい。むしろ、むすっとした人に感謝の気持ちを伝えられる方が、ツンデレ効果があるかもしれない。
-アエラNo.47、2019.10.14より引用-

2019年10月31日
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