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2015-01-02

72.オバマケアの正体は?その1,H27.1

オバマケアについて、まとめると、
1.日本の国民皆保険制度とは全く異なる歪な保険制度、
2.民間保険会社はオバマケアを取り込んだ新しく、より高額な保険商品を国民に売る、
3.国には薬の単価を決める薬価決定権は無く、製薬企業の言い値で薬の販売ができる、
4.政府の医療費抑制政策のため、医師たちは、手厚く治療すると罰金、やらずに患者が死ねば遺族からの訴訟、
5.オバマケアで最大の受益者は民間保険会社と、製薬会社であり、国民ではないことだ。

1について、アメリカの場合、65歳以上の高齢者と障害者・末期腎疾患患者のための「メディケア」、低所得者のための「メディケイド」という公的保険制度がある。メディケイドは所得が国の決めた貧困ライン以下の住民が対象である。その間の、中間所得層や会社社員は民間保険会社と契約して、医療を受けるが、この人たちには公的保険はない。市場原理が支配するアメリカでは、薬や医療費がどんどん値上がりして、一度の病気で多額の借金を抱えたり破産するケースも珍しくない。民間保険は高いため、多くの人は安いが適応範囲が限定された「低保険」を買うか、約5000万人いる無保険者の一人となり、病気が重症化してからER(救急治療室)に駆け込む羽目になる。オバマケアは全国民に健康保険加入を義務化しているが、予防医療を含む10項目を保険の必須要件とし、個人年間負担額上限を6350ドルとした。予防医学の10項目とは「妊婦検診、避妊ピル、大腸検査、薬物中毒カウンセリング、小児医療・・・」などである。2についての話になるが、多くの人はそれまで加入していた保険商品が政府の既定条件を満たせず、新しい高額な保険商品に買い換える必要があった。なぜ高価な商品になるかといえば、全米50州のうち、45州は、保険市場の50%以上を1社か2社の保険会社に独占されているために、自由な価格競争が起こらないのだ。そして、処方薬は、これまで1回の処方ごとに30ドルの定額払いから、種類によって毎回薬代の30~50%の自己負担になるという変更である。薬代は製薬会社の言い値で決められるため、非常に高価で、大きな自己負担増となる。そして、保険に加入しない場合には国税庁から罰金を受ける。オバマケアでは、既往歴や病気を理由にした保険加入拒否を違法にしたが、多くの保険会社は代わりに、薬を値段ごとに7グループに分け、患者の自己負担率を定額制から一定率負担制に切り替えた。このやり方は高額な薬ほど、自己負担率は重くなる(最大50%)。保険会社は、一疾患について、多種類ある処方薬リストのうち、数種類のみ保険適応にした。保険リストに載らない薬は、すべて患者の自己負担であり、リスト外の薬は6350ドルという負担上限の適応外になる。HIV薬、リウマチ、心臓病、糖尿病など、慢性疾患薬の多くが処方薬リストから外され、国内トップレベルのがんセンターは保険のネットワークから外された。3について、アメリカ疾病管理予防センターのデータによれば、1999年から2008年までの間にアメリカ国内の処方薬価格は倍以上になっており、2012年に承認された12種のうち11種が、年間10万ドルを超えている。一方オバマ大統領は、今後10年で見積もられる処方薬総額3兆6000万ドル(360兆円)のわずか2%:800億ドル(8兆円)の値下げと引き替えに、薬価交渉権という選挙公約を放棄するという取引を業界との間で取り交わしていた。
-堤未果著「沈みゆく大国 アメリカ」集英社新書-より抜粋引用

2015年01月02日
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