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2010-07-20

6.患者と医師と家族の関係について-メンタル疾患の場合

 不幸にして体の病気を患ってしまった患者さんは、病変が目に見える形で検査結果を示されるわけで、病気の理解をしやすいと思います。ここに病変があるが、どうしますか?と治療についての議論をする基盤が出来ます。しかしメンタル疾患の場合、マスメディアではしきりに騒がれているけれど、まだ、生半可な知識を持った方が「病気じゃない」とか、あるいは治療を始めて少し良くなると、「やはりあの時は病気ではなかったのではないか?」と、患者さん自身や家族の方が考え始めることがあります。画像や血液検査のような客観的なデータに乏しいメンタル疾患ですから、証拠は?と言われても、その根拠となる病変を具体的に示せないという歯がゆさが常に付きまといます。しかし定型的な症状は揃っており、薬は確実に効果があるので、気分の改善や、悲観的な症状をあまり感じなくなるような、よい状態になっております。そうすると病気ではなかったという考えが湧いて来ることがあります。あるいは診断が違うのではないかというような疑問を抱くご家族もおられます。しっかり薬を飲んで治療の効果が出てきたが、ご自分やご家族は「メンタルな病気」という事実をどこかで否定したい気持ちがあるのかもしれません。この場合仕方がないので、もう一度、最初の頃の症状を振り返ってもらう、確認作業を行います。残念ですが、こんな症状があったんですよと、思い出していただき、しっかりと病識(自分が病気であると言う認識)を持っていただくことが必要になります。とかく嫌なことは忘れたいのが人情です。患者さんの気持ちは分かりますが、そのために治療が中断した場合には、症状が再燃してきます。再び悪化してきたときには、治療はかなり厄介になります。この間の患者、家族、医師の間には、何よりも十分な説明と共通の病気に対する認識がないと、治療は失敗に終わります。あるいはセカンドオピニオンなどの話へと進んでいきます。しかし、これ自体は悪い話ではないと考えます。正確な知識を持った医師の所にセカンドオピニオンを聞きに行くと、それで安心する場合もあります。逆にセカンドオピニオンを引き受ける場合もあります。これらいずれの場合にも、主治医の紹介状などの病歴と治療歴は必須です。いずれにせよ、病気の本体が見えにくいために、なかなか納得出来ない部分があると思います。

2010年07月20日
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